2013-12-30

My favorite things-2013

【Live】
特に印象に残ったライブ3本
2/18 Thee Oh Sees @O-nest  
つい先日残念ながら活動休止を発表したThee Oh Sees、まさかの来日公演。サウンドチェックの時から観客の「期待しまくってる!」オーラがひしひしと。日本でもずっと待っていたファン(当然自分も含めて)の気合いが伝わる。いざ始まった瞬間からもう大盛り上がり。爆音とうねるギターに迫力満点のリズム。想像以上のアツいライブに大満足です

9/16 The Enemies @八王子RIPS
思えばリリースの度に来日してくれているアイルランドのThe Enemies。
毎回観ていて思うのが、楽曲の演奏難易度がえらい高そうなのに決してテクニックをひけらかすような感じでは無く余裕を見せつつ、のびのび楽しそうに演奏している姿がとても和みます。今回は初めてヴォーカルの入った曲も聴けて、それが彼らの和やかキャラにさらに輪をかけるようで良かった。スケール大きいサウンドに細やかな表現が光り安定感抜群。 

12/7 Moonface @神保町 試聴室
ピアノとヴォーカルだけなのに、むしろそれでこそ最小限に近い形になる訳で様々な感情がダイレクトにこちらに伝わって来る凄みはさすが。熱く1曲弾き終わるごとに傍らに置いてあるグラスを観客に向けありがとうと乾杯の仕草をしているのも印象に残った。その日は予約で満員状態。後に演奏したyumboのアンコール時にスペンサーもピアノでさり気なく参加していたのも素敵なライブに。

Shimokitazawa Indie FanclubHostess Club Weekenderなどのフェスもとても楽しんだ一年でした。
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【Record Label】 
Fixture Records
毎回出すリリースが素敵すぎるカナダ・モントリオールのレーベルFixture Records。タイプは様々でも空気感と言うか、芯が通っていて一貫とした共通点(場所以外で)もあるように思えます。これからのリリースにも注目です。非常に楽しみ。






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【Band】 
カナダはカルガリーのWomenは解散してからも4人全員に「その後」がしっかり存在する事がとても興味深かったと同時にWomen時代に出した2枚のアルバムはそれぞれの創作方針がぶつかりながらも絶妙に融合しているアルバムだったのではと改めて思った。しかし新しいバンド/プロジェクトから色々と発見する事は多く、とても新鮮。

※他にも色々ありますが、あくまで2013年にリリースされたもの中心に挙げます。
Cindy Lee (Patrick Flegel) 元の作品自体は去年ですがスプリット7"は今年。
今年2月には当ブログでインタビューも行いました。※削除しました(2014.5.3)


Viet Cong(Matthew Flegel,  Michael Wallace)


Gold (Christopher Reimer)

Chrisは生前のソロ作が「The Chad Tape」として昨年リリースされている事も忘れてはいけない。

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【Albums,(EP)】  
※ABC順です(in alphabetical order)

Alex Calder : Time

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Alfred Beach Sandal : Dead Montano


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The Courtneys : S/T


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CROSSS : Obsidian Spectre


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The Dodos : Carrier




DOG DAY : Fade Out 

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Dr. Dog : B-Room


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Faux Fur
: S/T

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Freelove Fenner : Do Not Affect A Breezy Manner

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Ghostkeeper : Horse Chief! War Thief!
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Hooded Fang : Gravez
 
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Jay Arner : S/T



ジョセフ・アルフ・ポルカ(Joseph Alf Polka: S/T

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No Joy : Wait To Pleasure

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Mazes : Ores & Minerals


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The Silver Skeleton Band : Snake Highs

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今年もForgotten Hallを観て頂きありがとうございました!
よいお年を〜 
 

2013-12-26

TV DINNER / The Movie

アトランタのThe Clap(現在は活動していない模様)メンバーらによる新プロジェクトTV Dinner今年の3月にbandcampにデジタルでリリースされていた4曲「The Movie」
音を聴くとこれまでのサイケガレージでは無い。一つのジャンルに収まらずに、断片的なものを組み合わせたようなコラージュに近い。まだまだ試行錯誤の最中といった感じながらもDIY感たっぷりなビデオがすでに何本かあり、これにも注目したい。映像と合わせると彼らのビジョンが見えてきそうでかえって謎が深まるような気も。#1"Papa Gâteau"はスクリーンに女性が歌う姿を映し、それに合わせて淡々と演奏している。といったそのままな演出なのだが二次元的な感じがさらに強まり柔らかい歌声がどこか冷たく若干シュールな印象。#4 "Micro.wav"は一早くyoutubeで公開されていた曲で、ゴリゴリとした質感にポップな反復メロディが脳裏に焼き付く。完全に家の中で繰り広げられるゆるい宇宙観の#3 "Radioactive Make Out Club"もナイスだ。
4曲とも方向性は統一されておらず、次にどうなるか分からない自由な展開。それぞれ別のフィルター越しに見ているようだ。ただ、音やメロディにレトロでクラシックな空気がほのかに漂っているのは以前からの特徴なのかもしれない。この大正ロマンっぽい感じのアートワークが気になりますがThe Clap時代、メンバー自ら曲にこんなビデオをサンプリングしてたのを思い出した。このプロジェクトはその後どうなっているのか不明ですがこのある意味ひょうきんな感性は失わずに居て欲しい。
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bandcamp : Digital[released]March 17, 2013

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2013-12-23

Ketamines / You Can't Serve Two Masters

トロントのバンドKetamines、今年9月にリリースのニューアルバム「You Can't Serve Two Masters」タイトル曲の#1 "You Can't Serve Two Masters"を筆頭に出だしからサイケ/ガレージが炸裂し、後半にシンセがぬっと漂いながら入って来てさらに浮遊感が倍増。#2 "Come Inside"も森林のサンプリングっぽい音でミステリアスに始まり、熱をキープしながら力の抜き加減が上手く作用している。キメと脱力のバランスが程よく保たれた曲が多い。単にガレージだけではないポップな魅力も持っている。
昨年の「Spaced Out LP」はリバーブたっぷりのギターが印象的だったのに対し、間に7"のリリースを挟み、このアルバムではサイケ成分は控えめになった気も。ザラザラとした質感はより高まり、メロディがリアルに浮き出て来た分シンプルに思える。狙いか自然にかは不明ですが、音に関しては流れにある意味逆らうシフトチェンジで潔い。スブスブとした重めの#4 "Spirit Rebellion Time"もストレートな荒ぶりを見せる。しかしそこにユーモアのあるひねりが散りばめられ、ふるいにかけても目が粗いようで実は細かいのでしっかり残っている。ちょっとセンチメンタルな雰囲気の#3 "Everybody Gets Down"や#7 "So Clean"のまた別のポップさも良い。ラストがなぜかしみじみ終わるのが印象に残る。
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Mammoth Cave Recording : LP/ Digital[released]September 1, 2013
Southpaw Records
bandcamp

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The Ketamines- You Can't Serve Two Masters from Nick Benidt (VJ Bandit) on Vimeo.
 

2013-12-18

The Silver Skeleton Band / Snake Highs

 
バンクーバーのThe Silver Skeleton Bandのニューアルバム「Snake Highs」現在はbandcampで試聴、購入可能になっています。(現地でフィジカルがあるのかは不明)
いきなりヘビーで濃厚なサウンドが迫りまるで鉄の扉をこじ開けるような重量感たっぷりの雰囲気に圧倒される。#2 "Route of Evil"ではおどろおどろしい盛り上がりの間をオルガンの音色がうっすら鳴っていて劇的。内に向かって響き、非常に密室性が高いがその漆黒の中に突如浮上してくるメリハリのついた表現に目が覚める。そしてなによりロックでタフな印象が強い。しかし腰を据えて安定しつつも、じわじわと外堀を埋めていくスリリングで生々しい展開も多く見られる。全体的に曇りがかっているようなエコー効果でサイケデリックに思えるがそことは少し距離を置き、核となっているのは別なのではと感じた。バンド自らタグ付けているのは"jazz"である事も気になる。(ちなみに前作のタイトルはCatscratch Jazz

畳み掛ける様に重厚な曲が続き、一転#5 "Medicine"ではすっと陽が射してくるような開けた雰囲気にうっかり安堵してしまう。どこか冷たい鍵盤の音色はアルバムの至る所に登場していてモノクロ感を増長させている。#8 "Violent Violet"もクラシックながら鳥肌の立つ音の広がり。いわゆる今風に染まる事は無さそうな、堂々としたアルバムでとても好感が持てる。
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bandcamp[released]December 6, 2013

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これは2012年の映像ですが、熱量すごめでカッコいいです

2013-12-16

Dog Day / Fade Out

カナダ、ハリファックスのDog Dayの4枚目となるニューアルバム「Fade Out」現在はSeth SmithとNancy Urichの夫婦デュオでの活動ですが、最近のライブではサポートに同郷のMark Grundy (Quaker Parents)とSeamus Dalton (Monomyth)も加わり4人で演奏していたりする様です。アルバムでもゲストで何人か参加していて、より細かい部分まで創作意欲が盛り込まれて彩りを添えている。しかしおそらく基本的には2人で作ったであろうこのアルバムは前作よりさらにストレートに訴えかけて来る凄みがある。#2 "Wasted"の痛快さも良く、少しシリアスな空気感が増したように思えるのだが多少の「陰」があった方がより深みが出ている。#3 "Joyride"はこのアルバムアートワークのごとく何があるか分からない、奥へ進んでいく様な感覚に。(ちなみにアートワークはSeth Smithのもう一つの顔、YORODEOが手がけてます)オルタナティヴ的な影響を下敷きにしながらもそれとは別に独自のセンスに染まっている。彼ら自身の中にあるものが浮き出て来た感じだ。交互に歌うヴォーカルの暖かみのある柔らかさ然り、曲の至る所で垣間みる事が出来るが特に #6 "Get High"はメロディが儚くてエモーショナル。まだ終わっていないと穏やかに繰り返す#13 "Before Us"はこれまでとは一転、急に切ない気分になってしまう。アルバムタイトルの「Fade Out」というのが一瞬頭をよぎる。気骨あふれるサウンドは最高にカッコいいし、そんな強さはあっても余計な角の取れたような表情豊かなサウンドを夫婦でこつこつ探求し続けている姿勢がすごく素敵だなと思った。
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*fundog : Vinyl/CD/Digital[released]December 10, 2013

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A Preview Of Fade Out from Seth Smith on Vimeo.

2013-12-14

【band】Absolutely Free

Photo: via Absolutely Free bandcamp

カナダはトロントのAbsolutely Freeは元々2011年に解散したDD/MM/YYYYのメンバー5人から1人が抜け、そのまま残った4人が継続する形で始まったバンド。
以前顕著に表れていた混沌とした攻撃性やマスロック的要素はほぼ消え代わりにややスペーシーでサイケデリックな空気をゆるやかに醸し出している。これが元々持っていた素なのか、序々に変化していったのか、もう全く別のバンドで目指す所も異なるのだろう。(抜けたのがメインヴォーカリストという事も大きいのではと勝手に推測)名前を変え、一度バンドを解体した理由はこれだったのかと妙に納得した。
しかし強みは同じメンバーでの活動期間が8年近くと長かった事もありバンドの団結力、音のレイヤーの重ね方は抜群。元々持っていたエクスペリメンタルな部分が別の方向に昇華しつつある感じ。 かと言って決して頭でっかちにならずに感情を素直にぶつけるようなダイナミックさも魅力。

2012年にUFO / Glass Tassle 12"をリリース。

 

セッション映像が圧巻。この壁紙が森な部屋はバンドのリハーサルスペースらしいです。インタビューなのにシンセを膝の上に乗せて喋ってる部分も和みます。

 

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2013年10月には別の12"シングルをLefse Recordsからリリース。


最近のライブ映像もかなり良いです。これは新曲なんでしょうか。

 
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さらに最近12月上旬から一週間、Twitterなどでレコーディングの写真が続々と投稿されており、これが何なのか非常に注目です。

2013-12-10

Freelove Fenner / Do Not Affect A Breezy Manner

モントリオールのトリオ、Freelove FennerのLPでは初となる「Do Not Affect A Breezy Manner」はFixture Recordsからバンド3作目となるリリース。レコーディングは今回も彼らのスタジオThe Bottle Gardenとの事。(おそらく毎回)
18曲の中で次から次へと途切れる事なく印象が変化していき、その都度気持ちまで切り替るのがなんだか新鮮に思えた。しかしアルバムの一体感はしっかりあって、一貫として耳に自然に馴染んでいくミニマルなリズム感と有機的なギターの揺らぎとの対比がシンプルかつユニーク。そこに時に暖かく、時にクールさを纏った豊かなヴォーカルが加わるとさらに立体的な魅力を生み出す。柔軟な旋律にソリッドな質感が映える#1 "In The Sound"を始め、メインの歌い手が変わり掛け合いも素敵な#6 "Dr. D"、躍動感のあるギターサウンドが自由に発揮されている#12 "Mary"、#14 "Girls From Hampton"はゆったりとした移ろいが美しい。各曲それぞれの中に思わずハッとする様なメロディ、アイデアが万華鏡のように違う景色を見せてくれるようだ。よく聴いているとそれこそ一音単位でもエレガントさを感じるようだ。
昨年の「Pineapple Hair E.P.」浮遊感とはまた少し違い今回はタイトでシャープな一面が際立っているようで3人の小粋なアンサンブル感が出ているのではとも思った。
奥が深い洗練されたポップ。本当に必要なものだけが浮き彫りになっている居心地の良さ。
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Fixture Records[released]November 19, 2013

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#1 "In The Sound"のビデオも素敵です

2013-12-05

Alfred Beach Sandal / Dead Montano


ソロ/バンド編成で活動する東京のAlfred Beach Sandalのニューアルバム「Dead Montano」
モンドポップスと称される事が多いのかもしれないが、多彩なリズムが飛び交い、ポップで細やかなイメージがそのまま展開されている。1つのジャンルに固執しない自由奔放なサウンド。昨年のカセットに収録されていた#6 "Night Bazaar(Album version)"として再び登場して存在感を増している。
歌詞は何かの比喩だけでも無さそうだし現実的すぎる訳でも無く、日常からふっと一瞬離れられるような西洋的なエッセンスを感じるストーリーが聴いて居る側の想像力まで掻き立てる。でも(当たり前の事かもしれないが)全く別世界という感じがしないのは、柔らかい日本語のニュアンスが持つ効果なのかもしれない。それらが身近で自然に溢れ出て来る心地良さ。そして聴いていて一貫として印象に強く残るのはなんと言っても歌声の引力だ。これがあるからこそロマンチックな歌詞がすんなり馴染むのだろう。サウンドと絶妙に重なった時の心躍る感じがとても魅力的。#3 "仕立屋"のうねるアンサンブルとの組み合わせもユニークだったり、伸びやかなメロディが感傷的になる#9 "Coke, Summertime"も引き込まれる。何気ない毎日のどこかに潜んでいるキラッとする瞬間が詰まったようなアルバム。オフィシャルのページにも書いてあるように、アルバムタイトルのDead Montanoは壊れたモンタノギター、死火山の意味を含めていると知って感覚的にすごく腑に落ちる。エキゾチックな事や物に憧れや思いを馳せる感じに似ていると思った。
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*ABS Broadcasting : CD[released]December 4, 2013 
 
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2013-12-01

Islands / Ski Mask

Islandsが今年9月にリリースしたニューアルバム「Ski Mask」
我が道をゆくと言った感じにリリースし続けていて2006年から通算5枚目。まず目に入るのはギョッとせざるを得ないアルバムのジャケット写真。どんな突拍子もない内容かと思いきや真逆。サウンドは非常に繊細でひたむきさすら感じる。#1 "Wave Forms"は穏やかなメロディーにシンセサイザーの音が背後で行き場を失うようにちらついている所はまるでThe Unicorns時代を彷彿させる。攻撃的では無く、華やかさから一歩引いて見ているような内省的な曲が多め。しかし毎回色々な試みを少しずつ取り入れている印象があり、その傾向を更新しながらもより焦点が絞れている。(原点回帰というのもあるのでしょうか)#6 "Hushed Tones"などは外に向かって広がる大らかな表現が漂流もしくはさすらい、みたいな言葉が似合う。そう思うとIslandsというバンド名が今更しっくりくる気もする。アコースティックからバンドサウンドへ変わる様がじわじわと熱を帯びる#10 "We'll Do It So You Don't Have To" も聴きどころ。意外性は無いかもしれないが、まさにスキーマスクの下に隠されているような彼らが持つユニークさやひねくれ的な感覚が未だ消えずに残っているのが頼もしい。
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*Manqué Music : LP/CD/Digital[released]September 17, 2013 
 
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メンバーも出演、ドキュメンタリー的な?#1 "Wave Forms"のオフィシャルビデオ。
   

KEXPのセッション映像から(#10 "We'll Do It So You Don't Have To")

2013-11-24

Lab Coast / Walking On Ayr

 
2008年終わり頃から活動するカルガリーのLab Coastの最新アルバム「Walking On Ayr」これまでCD、カセット、スプリット7"などで様々なレーベルから出していましたが今回はMammoth Cave RecordsからCDとデジタルでのリリース。
#1 "As Usual"を筆頭にのびやかで暖かいメロディとざくざくとした質感のバンドサウンドにぐっと引きつけられます。スプリットに収録されていた曲もいくつかあって背後にうっすら漂うハーモニーが印象的な#7 "Don't Wanna See You"は以前EPに収録されていた曲。このアルバムではそれより少し長いバージョンに。途中のつなぎのような物も含め曲すべてが3分未満に収まってコンパクトだ。#6 "For Now"も然りで基本ポップで詰め込み過ぎずに完結する心地良さはやっぱり最大の魅力。でもたまに表れる曲の余韻も聞き逃さないようにしたい所。#13 "Walken on Hairs"ではライブ音源と思われるもの(歓声なども聴こえる)もあって色んな場面を切り取って自由に貼っていったような楽しさ。もちろんバンドのバチッと息の合った時の煌めきはしっかり持っているし突発的な勢いもある。でも決して気合い入れてガチガチタイプでは無さそうだ。でもそのある種「ラフさ」と内に込めた熱量との絶妙な割合。どちらかが多過ぎてもこの空気感は出ないのではと感じた。それが曲の中をすり抜けるように浮かんでは消える、でもどこか存在感のあるヴォーカルや人懐っこいメロディの強さを際立たせている。
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Mammoth Cave Records : CD/Digital[released]July 22, 2013 
 
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2013-11-19

Night Beats / Sonic Bloom

シアトルを拠点に活動しているトリオ、Night Beatsの今年リリースされたフルアルバムとしては2枚目の「Sonic Bloom」リリースは前作と変わりReverberation Appreciation Society(つまりAustin Psych Fest)からのリリース。
その事や目を引くビビッドなアートワークから察する通り、聴いた途端から中毒性の高めサイケデリック/ガレージサウンドにアルバム全体が覆われている。
タイトルの#2 "Sonic Bloom"は目眩のしそうなギターサウンドが耳に残り、不気味な笑い声も入って曲にさらに怪しさが増す#8 "The Seven Poison Wonders"もかなりインパクト大だ。じわじわ粘着系の曲もあれば、骨太でソウルやR&B的な要素もちらりと感じられて渋い曲も。トリオならではのタイトさは十分にあっても勢いや雰囲気任せにしない、曲の中に細かい表現が盛り込まれていて程よい巧妙さも感じられてユニークだ。やや毛色の違う#12 "At the Gates"の存在感も効果抜群。しかし狂気の様なピリピリとした緊張感は最後まで続いてたるまない。むしろラストの#13 "The New World"ではさらに過熱してストイックな印象も。メンバーは他のサイドプロジェクト、例えばThe UFO Club(The Black Angelsのメンバー)やNight Sun(Curtis Harding、Black Lipsメンバー)のメンバーでも活動しているだけあって、自己完結だけに収まらない柔軟さもあるのだろうか。テキサス周辺のド定番サイケなのかと思いきやそれだけで無く、四方八方に広がりを見せる中身の濃いアルバム。
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Reverberation Appreciation Society
 LP/CD/Cassete/Digital[released]September 24, 2013 
 
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ちょっと怖めな#8 "The Seven Poison Wonders"のビデオ

2013-11-10

The Diet / (self-titled)

カルガリーのThe Dietのセルフタイトルのフルアルバム。現在はbandcampでデジタル音源のみ公開、購入可能となっています。このアルバムは以前にあったEP5曲がさらに派生していった内容なのかもしれませんが、サイケデリックな音の広がりとポストパンク要素が十分に披露され、おそらく期間的にもいくつかの時期に分けて制作しているのだろうか、バンドとして一貫した雰囲気を持ちながらも各曲が練られていて丹念な印象も。#3 "Duplicators"のスリル加減や#4 "Kids By The Pool"のまどろみ感なども聴きどころですが、ハーモニーにも重点が置かれている。また中盤のインスト曲、#6 "Hysterical"ではエクスペリメンタルなサウンドも垣間見えて一面性だけではない事も分かった。程よいバランスを保ちながらほろりと流れるメロディは美しいながらも、どこか儚げで危うい。全体に霧のように広がる冷たい空気感と繊細で暖かいハーモニーとの対比も魅力の一つ。しかし以前からあった最後の#11 "Cult Babies"はやはり一番ディープでインパクト大だ。ずぶずぶと大きなうねりに飲まれるようなサイケ感がうまく結晶化されている。このアルバムは曲ごとに枝分かれしていると思った理由はもう一つあって基本的にはバンド主体だが一部、元WomenメンバーのPatrick Flegelが3曲、Chris Reimerが1曲レコーディングに関わっています。(※どの曲かはbandcamp参照)元々交流が深かった両バンドでしたがこの辺がまた違ったニュアンスが出ている要因だろうし深みが増して興味深い。
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bandcamp : Digital[released]July 28, 2013 
 
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#3 "Duplicators"のミュージックビデオ


2013-10-21

Hermetic / Heartbreakology


カナダはバンクーバーで活動するデュオ、Hermeticのカセット作「Heartbreakology」
今までには昨年のアルバムCivilized City」とその後にSurvival EP」をリリースしている。
デュオならではのタイトにひたすら一直線に疾走する#1 "Man of Letters"は同時にヘビーなギターサウンド。曲数的にはEPなのだろうが、パンチの効いたダイナミックな6曲が揃っている。しかし2人ともボーカルを取り、時に掛け合いも交えながらメロディックに歌い上げる。特に#2 "Heartbreakology"はサウンドとは反して伸びやかな雰囲気。ごつごつとしたハードさはあってもそちら側ばかりに偏る事なく全体的にポップな印象を残す。ポストパンクとも言える身軽さも兼ね備えている。反復するリズムの#3 "Goodness Greatness/Murder Ballad"や#4 "For Sammy (Instrumental)"はストイックな部分が一段と引き出ていてカッコいい。まさにヘビーポップ炸裂。デュオはバンドとして最小人数でも阿吽の呼吸や互いの良さみたいな物を引き出しつつだと魅力がより凝縮されるのだなと改めて感じた。
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*Alarum Records : Cassette[released]August 6, 2013 
*bandcamp : Digital
 
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2013-10-16

Cult Babies / Cult Babies EP

バンクーバーのバンド、Cult Babiesbandcampでリリースされた「Cult Babies EP」
今はサイケデリックと言っても様々なタイプがあると思うし何が王道かであまり拘りたくないのですが、どストレートめなサイケ/ガレージ感が潔く、かつ程よい浮遊感がさらに曲の効果を霧のように拡散させている印象。#1 "Minokawa"の目の覚める様なバキバキのロックサウンド、#2 "Good Death"ではシンセ(オルガンかも)の音色がダイナミックだ。なんだかコテコテで大げさすぎる位で丁度良く感じる。消えそうで消えない残響のまま次の#3 "Wait"へと繋がり、中盤ヴォーカルのハーモニーがは緩やかで優しいのにサウンドはどんどん熱を帯び混沌としていく。タイトなリズムも疾走感が前面に出ている時もあれば#6 "All Confused"のようなゆったりした雰囲気の時もあって曲同様に緩急が効いている。EPの初めと終わりでは随分印象が変化するのも聴きどころなのでは。全体的にもやががった残響感につい隠れがちだがメロディは目指すところがはっきりしていてノスタルジーみたいなものもわずかに漂わせる。ちなみに部分的にプロデューサーとして関わっているのが同じくバンクーバーのJay Arnerだそうで納得。—————————————————————————————————————————

*bandcamp : Digital[released]October 3, 2013 

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2013-10-06

Dr. Dog / B-Room

フィラデルフィアのバンドDr. Dogの8枚目(セルフリリース作も含む)のニューアルバム「B-Room」メンバーは昨年の「Be the Void」と同じで6人編成。前作との間にEP Wild Race」(デジタルのみ)もリリースしている。1999年から今までかなり長い間活動し続けていても基本的に中心メンバーは大きく変わらず。メインで歌い、アルバムでは交互にヴォーカルを取るScottとTobyコンビも健在だ。これがバンドとして良い作用になる場合とそうでない場合があると思うが、彼らは間違いなく前者だろうと感じた。
#1 "The Truth"を聴いた時はなんだか落ち着いてしまったと思ったがそうでは無さそうだ。ハーモニーの美しさを守りつつ、"ローファイ"の烙印を振り切る様にどんどん近代化していった空気感が今回は不思議とまた逆戻りしているのでは。もちろん今度はポップでパワフルな曲の構成や安定感を伴っての事。ピアノの音色がひと際クラシックな華やかさを出している#4 "Distant Light"、#7 "Long Way Down"の厚みのあるサウンドなのに対して#6 "Too Weak To Ramble"はアコースティック1本でひたすらシンプル。自信が伝わって来る。しかし幾つかの曲、特に#9 "Twilight"ではどこかつかみ所の無い、もやっとしたサイケデリックな雰囲気が初期を彷彿させる。この辺は好みは分かれるかもしれないが、彼らのユニークな魅力を再発見できた。始めはタイトルからしてベタな印象もした#11 "Love"もアルバムの良い位置に入っていてアルバムのキーポイントとなっている様に感じた。やや攻め気味の前作とはまた違ったおおらかさがある。
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ANTI- Records : LP/CD[released]October 1, 2013

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2013-09-30

Gold / Losing Your Hair EP

カルガリーのバンド、Goldの「Losing Your Hair EP」は7"としてMammoth Cave Recordsからリリースされたのは今年の8月ですが、少し時間を数年前に戻して捉える必要があるのかもしれない。と言うのもこのEPをレコーディングしたのは元Women、Goldのメンバー/ドラマーでもあった、故Chris Reimer。
#1"Drugs" やどの曲でも印象的なのはVo/GのKaelen OhmとRena Kozakの2人の織りなす芯の強いハーモニー。爽やかでポップな音色が跳ねる#2 "Losing Your Hair"、#3 "Torchlight Parade"でも歌だけでなくギターの掛け合いが繊細かつ躍動感に溢れていてそれが曲全体に柔らかさを加えている。Matt Swann(Extra Happy Ghost!!!Astral Swans)の弾くベースは曲のコントラストを強めているし、ドラムの軽やかな安定感もさり気なく全体をまとめているようだ。 
「もし」と言いたくありませんがこの4曲は元々はEPで完結するつもりでは無かったのではなかろうか。(もちろん勝手な想像ですが)現在も活動を続けているバンドにとってもこのEPをリリースする事は非常に重要な意味を持つのだろう。止む事の無い様なドリームポップ。 キラキラと輝きを放つメロディが美しくも切ない。バンドのゆったりとした良い雰囲気が時間を止めてそのままパックされたような感じにも思える。—————————————————————————————————————————

Mammoth Cave Records : 7"[released]August 30, 2013
*bandcamp : Digital

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今年のSled Islandセッション映像。EPから"Waters"
Gold - Waters from Paul Chirka on Vimeo.

2013-09-20

Chevalier Avant Garde / Resurrection Machine

カナダはモントリオールのデュオChevalier Avant Gardeのセカンドフルアルバム
「Resurrection Machine」リリースは同じくモントリオールのレーベルFixture Recordsから。デビュー作「Heterotopias」の他にスプリット7"でのリリースもあった彼ら。
1曲ごとと言うよりはアルバム通して聴くと何か大きなもの(ないしそちら側)にぐっとのめり込んでしまう強い引力。その世界観にどっぷり浸れる感じがする。冒頭#1 "Nowhere"の爽やかに煌めくシンセポップから始まり、合間のインストゥルメンタルの曲#3  "Five Of Cups"ぐらいから序々にどこかに迷い込んだ様な不思議な空気が漂い始める。空間が歪む様なスペーシーなトリップ感。ユニークなのに音に棘が無く角が取れたなめらかさ。ミニマルですっと体に吸収されて、ひんやりとした中にもおほろげに存在する温度がとても心地よい。変化していくサウンドに馴染んで表れては残響と共に消えるヴォーカルの感情の移ろいも印象的だ。特に#8 "The Love Run"はメロディの奥にこもった暖かみを感じる。
躍動感のある#7 "Return"や#11 "Nothing Between"などはアーバンな雰囲気も醸し出しつつ、その輪郭は極めて有機的。どこまでも繋がっている奥行き感と瞑想するようなドリーミーな残響に包まれる。聴く度に違った発見が出来そうなアルバム。
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Fixture Records : LP[released]September 10, 2013


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#1 "Nowhere"のミュージックビデオ






2013-09-16

Man Man / On Oni Pond

フィラデルフィアのバンドMan Manのニューアルバム「On Oni Pond」フルアルバムとしては2年ぶり5作目。2004年からほぼ同じ様なペースでリリースでアルバムを出していて、
中心人物のHonusは間に別のプロジェクトMister Heavenlyでも活動していたのもまだ記憶に新しい。プロデューサーは前作と同じMike Mogis。
静かにイントロダクション的に始まる#1 "Oni Swan" から一気に豹変する#2 "Pink Wonton"の迫力にまず圧倒される。10年近く活動しているのにまだまだ本領発揮と言った感じがかなり好感。そして先行で発表されていた#4 "Head On"はチャーミングなメロディがひと際目立つ。#7 "Deep Cover"のようなほぼアコースティックの様な曲も強い印象。
打って変わり少しレトロな感じがするダンサブルさの#8 "Pyramids"もあくまで生音重視でがっちりブレずに展開している。一番の強みはやっぱりエモーショナルなHonusのヴォーカルな気がしてくるが、そのインパクトと同じ位音も華やか。特にドラムが叩き出すタイトで時に攻撃性の強いリズムも重要なポイントなのだろう。#13 "Born Tight"の突き進む様なにぎやかさもどこか心強い。
全体を通して曲のタイプに富んでいるのにどれも充実してるし、決して中途半端感は無い。全部一旦吸収してそれを巧く、のびのびと発揮させている。もし共通しているとすれば「エンターテイメント性」なのかもしれないとも思った。
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ANTI- Records : LP/CD[released]September 10, 2013


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#4 "Head On"のミュージックビデオ
 

2013-09-08

Viet Cong / Cassette

カルガリーのViet Congは元Womenメンバー2人とScott Munro、(Chad VanGaalenバンドのギタリスト)元Sharp Endsメンバーからなるバンドでいずれも同郷で活動している同士。タイトルやアートワークからカセット作品だと思われますが現在bandcampではデジタル音源が公開、購入出来るようです。追記 :  Mexican SummerFlemish Eyeから2014年に再発(カセットでは無くLP)
#2 "Unconscious Melody"でも分かるのは軽やかながら耳に刺さるギターの音色や安定感抜群のミニマルなリズム、そして控えめに入ってくるスペーシーなシンセの音色がいいアクセントに。そこに熱の籠り具合が渋いヴォーカルが絡む事で全体的にある種のグルービーさや生々しい立体感を生み出している。それよりもう少し荒削りな#3 "Oxygen Feed"ではメロディの強さを感じる。とはいえポストロック/パンクな印象が強く、最後の#6 "Select Your Drone" はまったりした展開から一気に不意を突かれるような不穏な唐突さもあって面白い。特に後半はハーモニーの合間に刃物の様な鋭さも出ています。
レコーディングの時期やアプローチの仕方なのだろうか、各曲の質感に微妙に差があるようにように思える。(あえての事かも)アメリカツアーもしているようなのでフルアルバム位のボリュームになると一体どんな展開になっていくのか、ぜひ聴きたい。
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*bandcamp : Digital / (Cassete)[released]September 5, 2013


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2013-08-31

Nanimal / Karma Kamikaze EP

Nanimalモントリオール発の4人組ニューバンド。今年7月に初となる「Karma Kamikaze EP」をbandcampでデジタルリリース。メンバーの内2人はParlovrLouisとJeremy、そしてGulferのメンバーのVincent。だからでしょうか音を聴けば納得のパワフルでポップな曲が見事に揃ってます。やはりグランジっぽさがうっすらと出ている#1 "Karma Kamikaze" (このEPのタイトルでもあるがニュアンス的な物が気になる所)や以前Parlovrでも音源にはなって無いが演奏はしていた#2 "Muffin"は特にタイトかつエモーショナル。一転#3 "Picnic On The Moon"はメロディアスな旋律がセンチメンタル。ただ単にテンションの高さだけでは無い緩急を付ける一面が。
でも強い印象を残すのは駆け抜ける勢いが聴いていて爽快なガレージポップな面ですが、全体的に硬質というよりギターサウンドが背後で反響するようなドリーミーさに溢れている。(ほんの少しシューゲイザー的なのかなとも感じた)この4曲でまだまだバンドの全貌までとは行かないかもしれないが、フレンドリーな魅力が存分に伝わって来たEP。今後どうなって行くのか楽しみ。—————————————————————————————————————————

bandcamp : Digital[released]July 24, 2013


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2013-08-29

ミツメ / うつろ

東京の4人組、ミツメ(mitsume)が7月にリリースしたニューシングル「うつろ」(utsuro)
2012年の2ndアルバム「eye」以来。タイトル曲の#1 "うつろ"はとびきりポップで跳ねる瑞々しいギターサウンドが特に印象的。そして歌詞とのギャップが面白い。"うつろ"状態なのは本来空虚で悲しい事だと思うのに聴いているうちになんだか夢見心地な気分になる。意味は変わるがまるで何かに夢中になって感覚が鈍っていく感じと似ている。
明確でタイトなベース/ドラムのリズムに鮮やかなサウンドはインパクト大の熱量を放っていながらも、溶け込むように平熱を保ったヴォーカルが浮遊感を醸し出す。でもどこか上の空とも言えるかもしれない。途中のランダムな展開も一筋縄ではいかない#2 "会話"、トロピカルな雰囲気の#3 "きまぐれ女"や最後のグルービーでダイナミックなうねりを見せる#4 "Chorus"も色々な音楽が根底にあるのだろうと思うが(2ndよりSFポップさは薄まっている)それを今の時代にすんなりフィットさせる様なしたたかさがまた魅力なのでは。ユーモラスで読めそうで読めない感情のふんわりとした表現も今っぽいと感じた。
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LP/CD[released]July 17, 2013


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